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【院長コラム】ニキビと食べ物の関係

【院長コラム】ニキビと食べ物の関係

― 科学的根拠(エビデンス)に基づいて徹底解説 ―

ニキビ(尋常性ざ瘡)は、思春期から大人まで多くの人が悩まされる皮膚疾患です。
皮脂の過剰分泌、毛穴のつまり、アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖、炎症反応など複数の要因が重なって発症します。

その中でも、「食べ物がニキビを悪化させるのでは?」という質問を多くの患者さんからいただきます。
近年、食事とニキビの関係を調べた研究が増え、一定の科学的根拠が蓄積してきました。
今回は、世界的な研究と日本皮膚科学会の見解を踏まえて、エビデンスに基づく最新の解説をお届けします。


1. 食事がニキビに影響する「3つの主なメカニズム」

食事によるニキビの悪化には、主に次の3つの生理学的経路が関係しています。

(1)高GI・高GL食によるホルモン変化

白米・菓子・甘い飲料など、血糖値を急上昇させる「高GI(グリセミック指数)」食品を多く摂ると、
インスリンとIGF-1(インスリン様成長因子-1)が増加します。
このホルモン変化により、皮脂腺が刺激され、角化が促進され、毛穴の詰まり(コメド)が生じやすくなります。

単位あたりのGIが高く、しかも摂取量が多ければGLは高くなります。

GL(Glycemic Load)は「食品中の糖質量 × その食品が血糖値を上げる速さ(Glycemic Index:GI)」を合わせて計算した指標です。

高GL食では、食後の血糖値・インスリン分泌が急激に上がる傾向があります。
このような代謝変化がざ瘡の病因に関わり得ると考えられています。

研究例
・オーストラリアのランダム化比較試験では、低GI食を12週間続けた群で、通常食群に比べて皮疹数が有意に減少しました(Smith RN, Am J Clin Nutr, 2007)。
・メタ解析でも、高GI・高GL食とニキビの関連を支持する結果が複数報告されています(Kwon HH, Nutrients, 2024)。

(2)乳製品(特に牛乳)によるIGF-1上昇

牛乳の摂取は、アンドロゲン、5α還元ステロイド(ジヒドロテストステロンの直接前駆体)、および毛包皮脂腺単位に影響を与える他の非ステロイド性成長因子を含んでいるため、コメド発生に影響を与える可能性があり、チーズの場合には発酵により牛乳中の前駆体からより多くのテストステロンが産生されます。

代表的研究
・ハーバード大学の観察研究では、牛乳摂取量が多い青年層でニキビの発症率が高い傾向を報告(Adebamowo CA, J Am Acad Dermatol, 2008)。
・7〜30歳の子ども・若年成人を対象に、乳製品摂取とニキビ発症との関連に関してのメタ解析でも、乳製品摂取とニキビリスクに有意な相関を認めています(Juhl CR, Nutrients, 2018)。

(3)炎症性食品と脂質バランスの乱れ

飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を多く含む食品(ファストフード、スナック菓子など)は、体内の炎症性サイトカインを増加させます。
また、リノール酸過多・オメガ3脂肪酸不足の食事バランスは、皮脂の質を変化させ炎症を助長する可能性があります。

逆に、魚(EPA・DHA)、ナッツ類、緑黄色野菜などの抗炎症食は、ニキビの改善を助ける可能性があるとされています。

2. 実践的な食事改善のポイント

◎おすすめ

  • 主食は低GI食品を選ぶ
     白米 → 玄米、白パン → 全粒粉パンへ。
  • 発酵乳製品や植物性ミルクを活用
     無糖ヨーグルトや豆乳、アーモンドミルクもおすすめ。
  • 抗炎症食品を積極的に
     青魚、アマニ油、ナッツ、緑黄色野菜、ベリー類など。
  • ビタミン・ミネラルをバランスよく
     ビタミンA・E・亜鉛・セレンなどは皮脂分泌や抗酸化に関与。

✖ 控えたいもの

  • 清涼飲料水、菓子類、スナック、揚げ物など。
  • 牛乳・チーズなどの摂取が多い方は一時的に減量して様子を見る。

🧠 実践例

「朝食を白パン+甘いコーヒー」から
→「全粒パン+無糖ヨーグルト+ベリー+ゆで卵」に変えるなど、
“少しずつ現実的に”取り組むのがポイントです。


3.注意点と限界

  • 食事はあくまで補助的な要素であり、薬物療法やスキンケアの代わりではありません。
  • 改善が見られるまでには少なくとも1〜3か月程度の時間が必要です。
  • 個人差が大きく、「乳製品を減らしても変化がない」「糖質を減らすと改善した」など、反応は様々です。
  • 過度な制限や偏った食事は、かえってホルモンバランスを乱す原因になります。

4.医師としての見解

ニキビ治療に一番大切なのは、面皰治療薬です。ベピオやデュアック、エピデュオなどのお薬はニキビができる前の毛穴の詰まりから確実に除去し、今出ているニキビにだけでなく周囲を含めて継続して外用することで、確実にニキビができにくい肌に導きます。

ニキビの原因は一つではありません。
皮脂分泌やホルモン、睡眠、ストレス、スキンケア、そして食事。
これらのバランスを整えることで、治療効果を最大化できます。

身原皮ふ科形成外科クリニックでは、
保険診療(抗菌薬・外用薬・面皰治療)でしっかりとエビデンスに基づいたニキビ治療を行います。

そして、さまざまな自費診療(ケミカルピーリング・光治療・レーザー・瘢痕治療・ダーマペン・ニードルRF)を、お一人お一人に合わせてオーダーメイドで組み合わせ、ニキビあとの治療にも皮膚科専門医が対応します。
**根本的かつ長期的に“ニキビの出にくい肌”**を目指しています。

身原 京美

執筆者

身原 京美

院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック

当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。

皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。

皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。

取得資格

日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞