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保湿剤の基本 :エモリエントとモイスチャライザー

保湿剤の基本 :エモリエントとモイスチャライザー

肌の乾燥は、アトピー性皮膚炎・敏感肌・高齢者皮膚など、多くの皮膚病の悪化因子となります。
そのため、正しい保湿は日々のスキンケアだけでなく、皮膚科診療においても極めて重要です。

保湿剤は大きく 「エモリエント(Emollient)」「モイスチャライザー(Moisturizer)」 に分けられますが、
これらは働きが異なり、正しく使い分けることで肌バリアの改善がより効果的になります。


1. エモリエント(Emollient)とは

● 役割:皮膚表面を“柔らかく・なめらか”にする成分

エモリエントは主に、

  • 皮膚の表面を覆う
  • 水分の蒸発を防ぐ(蒸散抑制)
  • 角層を柔らかく保つ

といった働きを持つ、油分ベースの成分です。

代表的な成分

  • ワセリン(petrolatum)
  • ミネラルオイル
  • シアバター
  • スクワラン・植物油脂

● 特徴

  • 肌の上に“フタ”をして水分の蒸発を防ぐ
  • 外的刺激から肌を守る
  • 塗った時の刺激が少なく、湿疹がひどいときやピリピリとした感じが強いときにも塗りやすい。
  • 角質に水分を与える働きが少ないので、しっとりしにくい。

2. モイスチャライザー(Moisturizer)とは

● 役割:角層の“内側に水分を保持”する成分

モイスチャライザーは、皮膚の角層に水分を取り込み、
うるおいを内側に蓄える働きを担います。

代表的な成分

  • ヒアルロン酸・コラーゲン(水分保持)
  • 尿素(水分保持+角質軟化)
  • グリセリン
  • アミノ酸

● 特徴

  • 皮膚に浸透して皮膚の中に水分を蓄える
  • 肌をしっとりさせる
  • 荒れた肌に塗ると刺激感があることも

3. 両者はどう使い分ければいい?

目的エモリエントモイスチャライザー
水分の蒸発を防ぐ
肌を根本的に潤す
敏感肌の保護
ベタつきが気になる◎(水分ベースが多い)

乾燥がひどい時は、「どちらか一方」ではなく、組み合わせるのも効果的です。

例:

まず低刺激の乳液やクリームで角層に水分を補給

ワセリンでフタをする


4. 当院で指導している保湿のポイント

  • 洗浄剤は泡で出るタイプか、泡立てネットなどでしっかり細かい泡を作り、手で優しくなでるように洗う。
  • 体を拭く際は、こすらず優しくタオルで押さえて水分をとる。
  • 入浴後はなるべく早く保湿する
  • 保湿は刷り込まず、少しべたつくくらいの量を塗る。
  • 手は手洗いや作業などで刺激を受けやすい。作業内容に応じて手袋を適宜使用し、手洗い後はまめに保湿を行う。
  • 処方薬との塗る順番なども指導

5.最後に

いろいろなスキンケア用品があふれる中、ご自身にあった保湿剤、スキンケア方法などを見つけるのは難しいことが多いですよね。当院では経験豊かな皮膚科専門医が、ご自身のスキンケアをお伺いし、お肌の状態を診断した上でスキンケアや治療のご相談に丁寧にのっています。

乾燥肌などお肌のトラブルでお困りの方は、是非一度ご相談ください。

身原 京美

執筆者

身原 京美

院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック

当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。

皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。

皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。

取得資格

日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞