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低温熱傷について

春らしくぽかぽかすると思ったら、急に冷え込みが強くなり、時には雪まで舞うこの気候のせいか、低温熱傷の患者さんがチラホラご来院されます。

低温熱傷とは、あまり熱いと感じない程度の温度でじっくりと時間をかけておこるやけどのことです。

(例えば44℃であれば6~10時間でやけどになると言われています)

液体や固体による普通のやけどは、「熱い」と感じればそれを避ける行動をしますし、液体であれば流れるので、火事などの特殊な場合を除いて熱との接触時間は短いことが多いのですが、低温熱傷の場合は少し熱いくらいの温度で、しかも睡眠中や飲酒後の知覚が落ちているときに生じるので、接触時間が長くなり結果としてやけどの深さが深くなりがちです。

低温熱傷の原因としては、睡眠中に使用した湯たんぽや、飲酒後に電気ヒーターの前でうたたねをしたなどが多くみられます。

低温熱傷の特徴は、やけどの面積自体は大きくないので生命にかかわることはほとんどありませんが、その深さが深く、治るまでに1月以上かかることも良くあります。ごく小さい面積の場合、塗り薬などで治ることもあるのですが、壊死がある程度の範囲で見られるときには外科的な治療を必要とします。壊死を取り除くデブリードマンや、植皮など行うことも珍しくないのです。

当然傷痕も残りますし、治るまでの過程で感染を伴い赤くはれて痛みをともなうリスクも高くなります。

湯たんぽの使用はなるべく避け、どうしても使う場合でも寝床を温めるのみとし、布団に入った後は布団から出すようにしましょう。

ヒーターに同じ姿勢で当たり続けることはとても危険です。

まだまだ冷え込む日が続きそうです。お気をつけくださいね。

身原 京美

執筆者

身原 京美

院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック

当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。

皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。

皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。

取得資格

日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞