金属アレルギーについて
金属アレルギーとは?
金属アレルギーは、金属が体に触れたり、食品や歯科金属を通じて体内に取り込まれたりすることで、かゆみ、湿疹、赤み などのアレルギー反応が起こる症状です。
大きく以下の2種類に分かれます。
- 金属接触アレルギー:金属が肌に触れることで起こるアレルギー
- 全身型金属アレルギー:食品や歯科金属を通じて体内に取り込まれ、全身に症状が現れるアレルギー
1. 金属接触アレルギー
金属が直接肌に触れることで起こるアレルギー反応 です。
症状
- 赤み、かゆみ、水ぶくれ、ブツブツ などが、金属が触れた部分に現れます。
- 接触が続くと、かぶれ や 湿疹が広がる こともあります。
原因となる主な金属と特徴
- ニッケル
- 含まれるもの:ピアス、ネックレス、眼鏡フレーム、留め金、ステンレス製品、歯科金属など
- 特徴:パッチテストの陽性率は 20〜25% と高く、特に 女性に多い です。
- 注意点:歯科金属に含まれる パラジウム と交差反応を起こすことがあります。
- コバルト
- 含まれるもの:メッキ製品、絵の具、クレヨン、セメント、革製品など
- 特徴:パッチテスト陽性率は 8% で、男女差はありません。
- クロム
- 含まれるもの:メッキ製品、皮革製品(なめし加工)、色素、染料など
- 特徴:最近は陽性率が 減少傾向 にあり、2.3% です。男性にやや多く 見られます。
- 水銀
- 含まれるもの:歯科アマルガム、水銀体温計(デジタル化前のもの)など
- 特徴:陽性率は 7% ですが、使用頻度が減少しており、今後さらに低下する見込みです。
- 金
- 含まれるもの:貴金属(アクセサリー)、ピアス、歯のかぶせ物など
- 特徴:2016年のパッチテスト陽性率は 23.2% で、特に女性に多く見られます。
診断と対策
- 診断方法:皮膚科で パッチテスト を受けて、原因となる金属を特定します。
- 対策
- 原因金属を含む製品(アクセサリー、時計、ステンレス製品など)を避ける
- 歯科金属が原因の場合、金属を使わない素材に交換する
2. 全身型金属アレルギー
食品や歯科金属を通じて体内に取り込まれた金属 により、全身にアレルギー症状が現れる タイプです。
症状
- 汗疱状湿疹(手や足に小さな水ぶくれができる)
- 亜急性痒疹、多形慢性痒疹、貨幣状湿疹
- 扁平苔癬(口内炎のような症状)、紅皮症 など、全身に症状が現れることがあります。
原因
- 食品や飲み物に含まれる ニッケル、コバルト、クロム が原因になることが多いです。
- 歯科金属 や ステンレス製の調理器具 からも微量の金属が体内に取り込まれることがあります。
含まれる食品の例
- ニッケル:チョコレート、豆類(大豆、ピーナッツなど)、ナッツ類、貝類、ココア
- コバルト:ココア、ビール、豆類
- クロム:オートミール、玄米、蕎麦、肝臓、貝類
診断と対策
- 診断方法:パッチテスト、内服テスト、食事制限による症状の変化の確認
- 対策
- 金属制限食:原因となる金属を多く含む食品を控える
- 調理器具の見直し:ステンレス製品を避け、ガラスやセラミック製のものを使用する
- 歯科金属の交換:原因金属を含まない素材に変更する
まとめ
金属アレルギーは、金属接触アレルギー と 全身型金属アレルギー に分かれ、それぞれ原因や対策が異なります。
- 金属接触アレルギー:金属が肌に触れることで起こるため、原因の特定と接触回避が重要です。
- 全身型金属アレルギー:食品や歯科金属を通じて体内に取り込まれるため、食事制限 や 歯科金属の見直し が有効です。
症状が続く場合は、皮膚科での検査・診断を受け、適切な対策を取りましょう。
※当院ではパッチテストは施行しておらず、他院へのご紹介となります。
参考文献:日本皮膚科学会誌 2025年 135 巻 1 号 37-43


執筆者
身原 京美
院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック
当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。
皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。
皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。
取得資格
日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞