ニキビ治療の最新ガイド
原因と効果的な治療法
キビ(尋常性ざ瘡)は、一生のうち9割以上の人が経験する、ごく一般的な皮膚の病気です。
思春期だけでなく、20〜30代以降の「大人ニキビ」でお悩みの方も多く、炎症が強くなるとニキビ跡やクレーター状の瘢痕が残ることがあります。
当院では、日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」に沿った標準治療を基本に、一人ひとりの肌質や生活スタイルに合わせた治療を行っています。
- ニキビは9割以上の方が経験する、ごくありふれた皮膚の病気です。
- 思春期にできることが多いのですが、20代、30代の方にも普通にみられます。
- お顔に出来ることが多く、また炎症がひどくなるとあとが残ることもあり、患者さんにとってはとても苦痛になります。
- ひどくなると病院にいくイメージがあるかもしれませんが、最近は出来たニキビだけでなく、だんだんニキビが出にくくすることもおくすりで出来るようになっています。
- 当院では保険のお薬だけでは効果が十分出ない患者さんに、ピーリング(自費治療になります)を受けて頂くことも可能です。
- ニキビには正しいスキンケアも大切です。受診して正しい知識を身につけましょう。
ニキビ治療の重要な2点
1.毛穴のつまりから改善すること
- 「今できているニキビ」を治すだけでなく
- 「これからできるニキビ」を予防することにつながります。
2.炎症を抑えること → ニキビが酷くなるのを防ぎ、〝あと〟が残らないようにする
- 赤ニキビ・黄ニキビの悪化を防ぎ
- ニキビ跡や凹みなどの〝あと〟を残さないことにつながります。
近年は、毛穴のつまりを改善する薬(面皰治療薬)が治療の主役になってきています。
その背景には、抗菌薬(塗り薬・飲み薬)の長期使用による薬剤耐性菌の増加があり、日本皮膚科学会のガイドラインでも、抗菌薬は「炎症が強い時期に限定して使い、原則3か月以内で見直す」ことが推奨されています。
もう一つの理由は「抗菌剤使用のみでは効果が不十分」だからです。
抗菌剤は以下の図の右2つ「赤ニキビ」「黄ニキビ」にしか効果がなく、
その手前の「毛穴」のつまりを除去する効果がないのです。
ニキビの原因と種類
ニキビは以下の段階を経て発生します。
1. 毛穴のつまりから始まる「微小面皰」
思春期に皮脂分泌が活発になると、毛穴の出口が詰まりやすくなり、皮脂が溜まることで目に見えない「微小面皰」が発生します。
2. 炎症のない「白ニキビ」「黒ニキビ」
毛穴が詰まり、皮脂がたまった状態で、皮膚の表面がポツポツと盛り上がって見えます。
3. 炎症を伴う「赤ニキビ」「黄ニキビ」
毛穴の中でアクネ菌が増えると炎症が起こり、赤く腫れた「赤ニキビ」に。さらに進行すると膿がたまり、「黄ニキビ」へと悪化し、あとに凹みや色素沈着を残すことがあります。


マルホ株式会社HPより
当院のニキビ治療方針
2023年ニキビ治療ガイドラインに基づく標準治療
日本皮膚科学会の最新ガイドラインでは、ニキビ治療を「毛穴のつまりを改善する治療」と「炎症を抑える治療」に分け、原因に応じた組み合わせ療法を推奨しています。
①毛穴のつまりを改善する治療


ビタミンA誘導体(アダパレン)
2008年に保険適用となった外用薬で、微小面皰の段階から治療が可能です。
- 毛穴の角層を整え、「詰まりにくい毛穴」にしていく薬です。
- アクネ菌を直接抑える作用はありませんが、ニキビの「スタート地点」を治療することで、新しいニキビの予防に役立ちます。
- 赤みやかゆみなどの刺激症状が出ることがありますが、保湿や塗る量・頻度の調整で対応できることが多いです。
過酸化ベンゾイル製剤
毛穴のつまりを改善しながら、アクネ菌に対する抗菌作用ももつ薬剤です。
白ニキビ(面皰)から赤ニキビまで、幅広いニキビに有効で、現在の主流治療の一つです。
副作用として、赤み・ヒリヒリ感・かゆみなどが出ることがありますが、
- 保湿をしっかり行う
- 少量から開始する
- 塗る範囲を徐々に広げる
といった工夫で、多くの方が継続可能です。
毛穴の詰まりを改善しながら抗菌作用を併せ持つため、炎症性ニキビにも有効です。過酸化ベンゾイル製剤(デュアック、ベピオ、エピデュオ)は、現在の主流治療です。
副作用として赤みやかゆみが出る場合がありますが、保湿や使用量を調整することで軽減できます。
BPO製剤でアレルギーが出た場合
- 約1~3%の患者さんでアレルギー性接触皮膚炎(強いかぶれ)が生じることが報告されています
- その場合はBPO製剤の使用を中止し、
アダパレン外用薬が主な選択肢となります(アレルギー性皮膚炎のリスクが低いとされています)。
副作用について
過酸化ベンゾイル製剤の使用により、一時的に皮膚炎(赤み・痒み)が起こることがあります。
ただし、これは薬の作用によるものであり、通常、使用を中止する必要はありません。
副作用を軽減する工夫
過酸化ベンゾイルは毛穴の詰まりを改善する一方で、皮膚のバリア機能に重要な「角層」を一時的に薄くすることがあります。
このため、以下の方法で副作用を軽減できます:
- 保湿をしっかり行う
- 少量(米粒大など)から使用を開始する
- 狭い範囲から徐々に塗布範囲を広げる
- 塗布後、必要に応じて洗い流す
これらの工夫により、多くの方が副作用を乗り越え、治療を続けることが可能です。
定期的な診察と治療効果
当院では、初診後2週間で診察を行い、治療の経過を確認しています。
この時点で症状が改善している患者さんがほとんどです。
継続して使用することで、ニキビができにくい肌を手に入れることが期待できます。
2025年に登場した新たなウオッシュゲル剤
ベピオウォッシュゲルは、過酸化ベンゾイル)5%を含む日本初の短時間接触療法(ショートコンタクトセラピー)用のニキビ治療薬です。従来のベピオゲル(2.5%)よりも濃度が高く、洗い流すタイプのゲルなので衣類の脱色リスクが少ないのが特徴です


主なポイント
- 使用開始年齢が広がった:従来の外用薬は12歳以上が対象でしたが、ベピオウォッシュゲルは9歳から使用できます小学生や思春期早期のニキビにも対応できるのが大きな魅力です。
- 高濃度の5% BPO:アクネ菌の殺菌と毛穴の角質溶解作用があり、白ニキビ(面皰)から炎症性の赤ニキビまで幅広く効果を発揮します。
- 洗い流すタイプ:白色のゲルで泡立ちはせず、短時間だけ塗布して洗い流すため、従来の塗りっぱなしタイプに比べて衣類の漂白リスクが少ないと説明されています。
②抗生物質
抗生物質(飲み薬)
強い炎症を伴うニキビには、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどの抗生物質を内服していただくことがあります。
日本皮膚科学会ガイドラインでは、
抗菌薬の連用により耐性菌が増えることを避けるため
原則3か月以内での使用と見直しが推奨されています。
当院では、ガイドラインで推奨されており、比較的副作用が少ないドキシサイクリンを中心に使用しています。
抗生物質(塗り薬)
軽い炎症性ニキビに対して、抗生物質の塗り薬を短期間使用することがあります。
ただし、外用抗生物質のみの長期使用は耐性菌を作りやすいため、
面皰治療薬(アダパレン/BPO製剤)との併用や切り替えを行いながら治療を組み立てます。
抗生物質の塗り薬のみで治療すると、その抗生物質に対する耐性菌が作られやすいとされています。
その他の治療
サリチル酸マクロゴールピーリング
- 毛穴の奥深くまで働き、微小面皰を効率よく取り除くピーリングです。
- 従来のピーリングと比べて刺激が少なく、安全性が高いと報告されています。
(MBderma 209:165-174,2013, Bella Palle 2:48-49,2017)
(J Invest Dermatol, 106:312-315,1996)
ビタミンC外用
- ビタミンCには抗酸化作用があり、炎症後の赤み・色素沈着の改善に役立つ可能性が報告されています。
- 一方で、ビタミン剤の内服によるニキビ改善効果は明確ではなく、ガイドラインでも推奨されていません。当院でも、内服ビタミン剤をニキビ治療の中心にはしていません。
※自費治療の内容・費用については、診察時に個別にご説明いたします
(Int J Cosmet Sci, 2005; 27: 171― 176, J Cosmet Dermatol, 2010; 9: 22―27, Int J Cosmet Sci, 2009; 31: 41―46.)
ニキビとスキンケア|毎日のケアも大切です
ニキビ治療の効果を高めるためには、日々のスキンケアもとても重要です。
- こすり過ぎない、やさしい洗顔
- 油分が多すぎない、ノンコメドジェニック製品の使用
- 十分な保湿で、薬の刺激から肌を守る
など、肌状態にあわせた具体的な方法を、診察の中で丁寧にお伝えします。
当院では、ガイドラインや国内報告に基づいたスキンケアの知見を取り入れています。
(Aesthet Dermatol, 2007;17:272―278, 西日皮膚,2008;70: 429―435, Nanomedicine, 2011; 7: 238―241)
耐性菌問題と治療の最新動向
- 欧米では、ニキビ患者さんから検出される**耐性菌が50〜90%**に達しているという報告もあり、抗菌薬の使い方が世界的に見直されています。
- 日本でも、過去と比べて耐性菌の増加が報告されており、
「抗菌薬を必要な期間だけ使い、面皰治療薬やBPO製剤を主軸とする」流れに変わりつつあります。
当院でも、耐性菌対策を意識した治療設計を心がけています。
よくあるご質問(FAQ)
Q. どのくらいでニキビは良くなりますか?
A. 個人差はありますが、外用薬を適切に続けると、1〜2か月ほどで新しいニキビが減ってきたと実感される方が多いです。その後も「できにくい状態」を維持するため、ガイドラインでも維持療法が推奨されています。
Q. 市販薬だけではダメですか?
A. 軽いニキビであれば市販薬で落ち着くこともありますが、
- 赤ニキビや黄ニキビが増えてきた
- ニキビ跡や凹みが心配
という場合は、早めの医療機関受診をおすすめします。
Q. ニキビ跡・毛穴の開きも治療できますか?
A. ニキビ跡や毛穴の開きに対しては、
レーザー・ダーマペン・サーマニードルなど、別の治療が必要になることがあります。
→「ニキビ跡・毛穴」のページもあわせてご覧ください。
まとめ|正しい治療で、ニキビのできにくい肌へ
ニキビは適切な治療で改善し、新しいニキビの発生を防ぐことが可能です。
当院では患者さんの症状や生活スタイルに合わせた適切な治療法をご提案します。ぜひ一度ご相談ください。


執筆者
身原 京美
院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック
当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。
皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。
皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。
取得資格
日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞
