ニキビ

Medical

ニキビ治療の最新ガイド

原因と効果的な治療法

  • ニキビは9割以上の方が経験する、ごくありふれた皮膚の病気です。
  • 思春期にできることが多いのですが、20代、30代の方にも普通にみられます。
  • お顔に出来ることが多く、また炎症がひどくなるとあとが残ることもあり、患者さんにとってはとても苦痛になります。
  • ひどくなると病院にいくイメージがあるかもしれませんが、最近は出来たニキビだけでなく、だんだんニキビが出にくくすることもおくすりで出来るようになっています。
  • 当院では保険のお薬だけでは効果が十分出ない患者さんに、ピーリング(自費治療になります)を受けて頂くことも可能です。
  • ニキビには正しいスキンケアも大切です。受診して正しい知識を身につけましょう。

ニキビ治療の重要な2点

  1. 毛穴のつまりから改善すること → 今あるニキビだけでなく、新しくニキビが出来ることも防ぐ
  2. 炎症を抑えること → ニキビが酷くなるのを防ぎ、〝あと〟が残らないようにする

ですが、
最近、1. 毛穴のつまりを改善するお薬が主流になってまいりました。
理由の一つは2. 炎症を抑える外用薬=抗菌剤の長期使用により、
ヨーロッパやアメリカはじめ、アジアや中南米でもニキビ患者さんからの薬剤耐性菌がみられるようになっているのが問題となってきたのです。
特にヨーロッパではニキビ菌の半数以上(50-90%)が耐性菌といわれています。

日本ではヨーロッパや欧米ほどニキビにおける耐性菌が大きな問題にはまだなっていませんが、2000年には0.5%未満であった耐性菌が、その後急激に増加して半数以上になっているという報告もみられます。

日本皮膚科学会の尋常性ざ瘡治療ガイドライン(日本におけるニキビ治療の教科書のようなものです)では、抗菌剤による治療は、ぬりぐすり、飲み薬とも炎症が強い時期に使うことを強くすすめていますが、耐性菌の出現を防ぐためにも原則3ヶ月で見直すようにともすすめられています。

もう一つの理由は「抗菌剤使用のみでは効果が不十分」だからです。

抗菌剤は以下の図の右2つ「赤ニキビ」「黄ニキビ」にしか効果がなく、
その手前の「毛穴」のつまりを除去する効果がないのです。

ニキビの原因と種類

ニキビは以下の段階を経て発生します。

1. 毛穴のつまりから始まる「微小面皰」

思春期に皮脂分泌が活発になると、毛穴の出口が詰まりやすくなり、皮脂が溜まることで目に見えない「微小面皰」が発生します。

2. 炎症のない「白ニキビ」「黒ニキビ」

毛穴が詰まり、皮脂がたまった状態を指します。

3. 炎症を伴う「赤ニキビ」「黄ニキビ」

毛穴の中でアクネ菌が増殖し、炎症を起こします。進行すると膿が溜まり、青ニキビへと悪化することもあります。

ニキビの発生段階

マルホ株式会社HPより

当院のニキビ治療方針

当院では、日本皮膚科学会のニキビ治療ガイドラインに基づき、最新の治療を提供しています。

①毛穴のつまりを改善する治療

上から順番に
エピデュオ
べピオ
デュアック
ディフェリン
  • ビタミンA誘導体(アダパレン)

2008年に保険適用となったアダパレン(商品名:ディフェリン)は、微小面皰の段階から治療が可能です。
副作用として赤みやかゆみが出る場合がありますが、保湿や使用量を調整することで軽減できます。

  • 過酸化ベンゾイル製剤

毛穴のつまりを改善し、抗菌作用も持つ過酸化ベンゾイル製剤(デュアック、ベピオ、エピデュオ)は、現在の主流治療です。
副作用として赤みやかゆみが出る場合がありますが、保湿や使用量を調整することで軽減できます。

過酸化ベンゾイル製剤の注意点と代替治療

過酸化ベンゾイル製剤は、ニキビ治療において毛穴のつまりを改善し、抗菌作用を持つ有効な治療法です。しかし、一部の患者さんにアレルギー反応が起こる可能性があります。

アレルギー性接触皮膚炎のリスク

過酸化ベンゾイル製剤は、約3%の方にアレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)を引き起こすことが報告されています。この反応が確認された場合、過酸化ベンゾイル製剤の使用は中止が必要です。

アダパレンが選択肢に

過酸化ベンゾイル製剤に対してアレルギー反応がある患者さんには、アダパレンが唯一の選択肢となります。アダパレンは、微小面皰の改善に効果があり、アレルギー性皮膚炎を引き起こすリスクが低い点が特徴です。


過酸化ベンゾイル製剤の副作用と対策

過酸化ベンゾイル製剤は、毛穴の詰まりを改善し、ニキビ治療に有効な薬剤です。
しかし、副作用として赤みや痒みが生じる場合があります。

副作用について

過酸化ベンゾイル製剤の使用により、一時的に皮膚炎(赤み・痒み)が起こることがあります。
ただし、これは薬の作用によるものであり、通常、使用を中止する必要はありません。

副作用を軽減する工夫

過酸化ベンゾイルは毛穴の詰まりを改善する一方で、皮膚のバリア機能に重要な「角層」を一時的に薄くすることがあります。
このため、以下の方法で副作用を軽減できます:

  • 保湿をしっかり行う
  • 少量(米粒大など)から使用を開始する
  • 狭い範囲から徐々に塗布範囲を広げる
  • 塗布後、必要に応じて洗い流す

これらの工夫により、多くの方が副作用を乗り越え、治療を続けることが可能です。

定期的な診察と治療効果

当院では、初診後2週間で診察を行い、治療の経過を確認しています。
この時点で症状が改善している患者さんがほとんどです。
継続して使用することで、ニキビができにくい肌を手に入れることが期待できます。

2023年に登場した新たなローション剤

新たに処方可能となったローション剤は、従来の「ベピオゲル」と比較して以下の点で改良されています。

  • 水分蒸散抑制率の向上
  • 水分保持率の向上
  • 副作用(赤み・痒み)の軽減が期待

これにより、より快適に過酸化ベンゾイル製剤を使用できるようになりました。

べピオローション

抗生物質(飲み薬)

炎症を抑えるために、ドキシサイクリンやミノマイシンなどを処方します。
ただし、耐性菌の発生を防ぐため、原則3か月以内で使用を見直します。

抗生物質(塗り薬)

抗生物質の塗り薬のみで治療すると、その抗生物質に対する耐性菌が作られやすいとされています。

ガイドラインでの抗生物質のぬり薬は効果が認められており、ごく軽症のニキビには抗生物質の塗り薬のみを処方することもありますが、次々とニキビが出る場合には①の面皰治療薬への切り替えや併用をおすすめしています。

サリチル酸マクロゴールピーリング

サリチル酸マクロゴールピーリングは、毛穴の奥深くまで作用し、微小面皰を除去します。
安全性が高く、肌表面を滑らかに整えます。

(MBderma 209:165-174,2013, Bella Palle 2:48-49,2017)
(J Invest Dermatol, 106:312-315,1996)

ビタミンC外用

ビタミンCには抗酸化作用があり、炎症を抑えニキビ跡の改善にも効果があります。

(Int J Cosmet Sci, 2005; 27: 171― 176, J Cosmet Dermatol, 2010; 9: 22―27, Int J Cosmet Sci, 2009; 31: 41―46.)

※ビタミンCの内服などのビタミン剤内服は効果を確かめた報告はなく、ガイドラインでも推奨されておらず、当院でもおすすめしておりません。

スキンケア

ニキビ治療には、適切なスキンケアも欠かせません。
低刺激性やノンコメドジェニック製品を使用し、保湿をしっかり行うことで治療の効果を高めます。
当院ではスキンケア指導も行い、製品のサンプル提供や販売もしています。

(Aesthet Dermatol, 2007;17:272―278, 西日皮膚,2008;70: 429―435, Nanomedicine, 2011; 7: 238―241)

耐性菌問題と治療の最新動向

抗菌剤の長期使用により、ヨーロッパやアメリカでは耐性菌が50~90%にも達しています。
日本でも耐性菌の増加が報告されており、抗菌剤を慎重に使用しつつ、過酸化ベンゾイル製剤などを併用する治療が推奨されています。

まとめ:正しい治療で美しい肌を取り戻しましょう

ニキビは適切な治療で改善し、新しいニキビの発生を防ぐことが可能です。

当院では患者さんの症状や生活スタイルに合わせた適切な治療法をご提案します。ぜひ一度ご相談ください。

身原 京美

執筆者

身原 京美

院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック

当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。

皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。

皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。

取得資格

日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞