乾癬とは
乾癬(かんせん)は、日本人の約0.3〜0.4%が発症するとされる、慢性的な皮膚の炎症性疾患です。
赤み(紅斑)を伴うがさがさした白い皮むけ(鱗屑)が特徴で、特に以下の部位に出やすい傾向があります。
- すね
- 耳のまわり
- 頭皮
- 腰やお尻
- 陰部 など
また、爪の変形や関節の痛み(乾癬性関節炎)を伴うこともあり、特に以下の症状がある方は注意が必要です。
- 頭皮やお尻に広がる皮疹
- 指、肘、膝、腰、首などの関節痛
このような場合、塗り薬だけでは改善が難しく、内服薬や注射による全身治療が必要になることもあります。
乾癬の原因と皮膚の変化
乾癬の皮膚では、皮膚細胞のターンオーバーが通常の10倍以上に早まり、次のような変化が起こります
- 炎症による赤み(紅斑)
- 皮膚の盛り上がり(肥厚・浸潤)
- 白くかさついた鱗のような皮むけ(鱗屑)
乾癬とMACE(心筋梗塞や脳卒中などのリスク)
乾癬は「皮膚の病気」と思われがちですが、実はそれだけではありません。
近年の研究で、乾癬は全身の「慢性炎症」と関係しており、動脈硬化を進めやすいことが分かってきました。
MACEとは?
MACE(メイス)とは、「Major Adverse Cardiovascular Events」の略で、次のような重大な心血管系の病気のことを指します。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳卒中
- 心血管死
なぜ乾癬が心臓病と関係あるの?
乾癬の体内では、皮膚だけでなく血管や心臓に炎症を起こす物質(サイトカイン)もたくさん作られています。
そのため、乾癬の患者さんは以下のリスクが高まりやすいことが分かっています。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症(中性脂肪や悪玉コレステロールの増加)
- 肥満(特に内臓脂肪型)
これらが動脈硬化を進行させて、MACEの引き金となるのです。
特に注意が必要なケース
- 中等症〜重症の乾癬(広範囲に皮疹がある/関節炎を伴う)
- 生活習慣病がすでにある方
- 喫煙歴がある方/メタボ傾向がある方
当院でできること
当院では、乾癬の治療だけでなく、血液検査や血圧測定の結果などに基づいて生活指導、内科への紹介も行っています。
また、全身の炎症を抑える生物学的製剤や内服薬の導入により、乾癬だけでなくMACEリスクの低下も期待されています。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿をもった小さな発疹が繰り返し出る疾患です。見た目は異なりますが、乾癬と同様に慢性的な経過をとり、皮膚科での継続的な治療が必要です。
約1割以上の患者さんで、鎖骨や指の関節に痛みが出る掌蹠膿疱症性関節炎を伴い、こちらも全身療法の対象になります。


当院で行う乾癬・掌蹠膿疱症の治療
軽症〜中等症の治療(基本治療)
- ステロイド外用薬
- ビタミンD3軟膏
- タピナロフ外用薬
重症・難治性の場合の治療
- 免疫抑制剤(シクロスポリン)
- 抗リウマチ薬(メトトレキサート)
- 免疫調整薬(オテズラ)※掌蹠膿疱症に対しても保険適応になりました。
- JAK阻害薬・TYK2阻害薬(内服)
- 生物学的製剤(抗体による標的治療)
症状の重さや関節痛の有無に応じて、乾癬ピラミッド治療アルゴリズムに沿った治療を行っています。
当院の特徴
当院では、生物学的製剤の使用認可施設として、多くの患者さんに全身療法を提供してまいりました。
また掌蹠膿疱症についても丁寧な診療と長期的なフォローを行っています。


執筆者
身原 京美
院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック
当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。
皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。
皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。
取得資格
日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞