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【第51回日本熱傷学会学術大会に登壇】

【第51回日本熱傷学会学術大会に登壇】

学会からお招きいただきパネリストとして発表、討論を行いました。

2025年5月29日、金沢で開催された第51回日本熱傷学会学術大会において、パネリストとして登壇いたしました。


今回の発表では、長崎病院での15年以上にわたる熱傷診療の実績と、現在の「身原皮ふ科形成外科クリニック」での外来診療の工夫を、最新のエビデンスに基づきながら紹介しました。

左から新田原聖母病院形成外科 安田浩先生、日本大学形成外科 竹内ともみ先生、私
熊本赤十字病院形成外科 黒川正人先生、川崎大学形成外科 木村知己先生
安田先生は元産業医大形成外科准教授で、熱傷学会の重鎮、黒川先生もとても御高名な先生です。

外来熱傷患者さんが最も気にすることとは?

当院に来られる小範囲熱傷の患者さんから多く寄せられるのは、以下のような質問です。

  • 応急手当は正しかった?
  • ちゃんと治る?
  • 痛みや水疱はどうすればいい?
  • 傷あとが残らないか?

これらはすべて、患者さんにとって“いま”不安で仕方のないことです。診療ではこうした気持ちに寄り添いながら、状態に応じた正確な深度評価と予後説明を行うことを大切にしています。

「氷で冷やす」のは正解?間違い?

熱傷の応急処置において、冷却には、

「氷は使用せず、2〜15℃の流水による冷却が推奨される」

ということです。

創傷治癒に対する悪影響や低体温のリスクがあり、基本的には氷による冷却は勧められていません

しかし、小範囲であれば痛みの緩和のためにも氷水で冷やしながら受診するのは間違いではないと思います。

水疱蓋除去のメリット・デメリット

外来診療では「水疱の皮を取るべきか?」という判断も重要なテーマです。
私は、患者さんの痛みや生活しやすさを最初に考慮し、創面の観察の必要性と感染リスクを考慮しながら、ケースに応じた対応を重視しています。

発表も好評だったようで、発表後の総合討論では、座長や他の演者、フロアの先生方との活発な意見交換があり、多くの反響をいただきました。
エビデンスに基づいた冷静かつ柔軟な診療が、今後の地域医療においてもますます求められていることを実感しました。

発表で引用した国際誌掲載論文(筆頭著者)

私自身が筆頭著者として執筆した、皮膚の微小循環から熱傷深度を評価するダーモスコピーの論文も引用しました(Burns誌, 2015)。
今後も、外来で活かせる確かな視点と技術を探求し続けたいと思います。

まとめ:クリニックでの外来熱傷診療におけるポイント

「傷あと」は瘢痕だけでなく、色調変化なども含めて配慮が必要です。

小範囲熱傷の患者さんは「痛み」「処置の是非」「傷あと」への不安を抱えて来院されます。

そのため、創の状態と深度をしっかり見極め、予後を丁寧に説明することが重要ですというお話をして多くの先生方から共感を得たのでした。

身原 京美

執筆者

身原 京美

院長 / 身原皮ふ科・形成外科クリニック

当院は広島で皮膚科専門医と形成外科専門医が診療を行う専門クリニックです。

皮膚科の新しい治療を積極的に取り入れる一方で、高齢者医療にも長年携わってまいりました。また、院長は2人の娘を持つ母として、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年代の患者さんに対応しております。女性としての視点を活かし、シミやシワなど整容面のお悩みにも親身にお応えするクリニックを目指しています。

皮膚のお悩みは、お気軽にご相談ください。

取得資格

日本皮膚科学会認定専門医 抗加齢医学会認定専門医 日本褥瘡学会認定褥瘡医師 医学博士 日本熱傷学会学術奨励賞受賞 国際熱傷学会誌BURNS outstanding reviewer受賞